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茅葺屋根保存協会
スーパーケムラー 燻蒸システム

煙による燻蒸を行う、自動制御燻蒸装置です。


代官屋敷


〒329-0516
栃木県下野市大光寺1丁目5番地11号
TEL 0285-51-0786 FAX 0285-52-1586

腐朽の種類 耐久年数

日本古来の茅葺屋根文化とその技術を継承し後世に伝えるために 
茅葺屋根保存協会
■スーパーケムラーの実験及びその効果■
「スーパーケムラーの煙燻蒸による抗菌効果の研究」
平成12年7月27日

栃木県ベンチャーモデル企業育成事業
共 同 研 究 成 果 報 告 書
研究者 宇都宮大学農学部教授 農学博士 吉沢 伸夫
東京農工大学大学院連合農学研究科
(宇都宮大学配置) 石栗 太 奥 竹史
(株)茅葺屋根保存協会 代表取締役 吉村 潤

燻煙による抗菌効果実験
1 目的
 スーパーケムラーを用い、所望する煙を安定した状態で発生させ、その煙を屋内に送り込み、内部から燻蒸した場合の囲炉裏効果を定量的に把握すため、屋根に取り付けられた煙コーティングされた茅材の抗菌作用を観察する。
2 実験環境及び茅サンプル
 (1)実験実施期間
平成12年2月25日〜平成12年4月25日

(2)実験用サンプル採取場所
実際の燻蒸作業環境と同等の状態において実験用サンプルを採取 するため、サンプル採取場所は、栃木県芳賀郡茂木町旧羽石家と した。

(3)燻蒸の煙温度と質量
燃料用薪は、ナラ(平均含水率14.3%)を使用した。
薪の主成分はヘミセルロースとセルロース(炭水化物、合わせてホ ロセルロースともいう・・約75%)とリグニン(炭化水素・・約20%) である。
炉内温度が約200度から300度でホロセルロース、300 度から400度でリグニンの順で炭化が進行する。はじめは「水煙」 と呼ばれる水蒸気の多い煙が立ち昇り、炉内温度が上昇してヘミ セルロースの熱分解が始まると、刺激性の強い、いわゆる炭焼き 言葉で「きわだ煙」と呼ばれる白色の煙に変化する。更に温度が 上昇し、リグニンの熱分解が始まると、青いタール分の多い煙(白青
煙)になる。煙燻蒸に用いるのは「きわだ煙」の部分であり、炉内 温度200度〜300度になるよう煙突出口温度を130度に設定し た。
(付表1:旧羽石家住宅燻蒸記録)

質量は、米国Gilian社製恒気流収集器(Constant flow air sampler) AC−PROG、P/N801011 Rev j を使用し、1分間に10リットルの煙 を収集、東京ダイレック社製テフロンコーティングフィルターで煙成 分を吸収、ミリグラム単位で計測した。使用した煙量は平均50mg であった。
(付表2:煙量測定結果記録表)

(4)茅サンプル
本年度静岡県御殿場市で採取したススキの茎を約10cmに切り 揃え、各3本ずつのグループとしてそれぞれ「無燻蒸」「1時間燻 蒸」「2時間燻蒸」「3時間燻蒸」「4時間燻蒸」「5時間燻蒸」のサ ンプルを作成した。

(5)培地
PDA(Potato.Dextrose.Agar.馬鈴薯.砂糖.寒天)培地を使用した。
3 実験の実施
 (1)実験家屋内部にスーパーケムラーからの煙吐出ダクトを設置し、サンプル茅を実験家屋天井に吊り下げ、燻蒸を開始した。開始から各1時間毎に1グループの茅をはずし、PDA培地に設置した。
4 観察記録
     観察記録表
5 傾向の特定
(1)培地に点状のカビを視認した時期
無燻蒸のサンプルは、実験開始後5日目で視認したが、燻蒸 サンプルの場合、燻蒸時間が長い程視認時期は遅くなった。
その時間差は1時間につきほぼ1日であった。なお、4時間・5 時間燻蒸のサンプルは更に1日遅れた。また、5日目から培地は うす黄緑に変色し始め35日目には濃い緑に、更に45日目には 黒くなった。これは、バグテリアが培地内に入り込み、カビの皮膜が 無いか又は薄い所で視認されたものであり、今回の実験とは関連 しないものである。
(2)培地へのカビの広がり時期
無燻蒸、1時間燻蒸・2時間燻蒸は点状菌の視認1日後にカビの
広がりが視認できたが、3時間以上燻蒸の場合、2〜4日後であった。
 
3)茅へのカビの取り付き
無燻蒸は、茅と培地との隔たり無く7日目にはカビが繁殖した。
また、14日目には茅を含む培地全体にカビが蔓延したが、燻蒸茅 は、1時間のものであっても30日目まで茅には取り付かなかった。
なお、3時間以上のサンプルでカビが茅を避ける傾向を確認でき た。
また、それ以前に切り口および紐で個縛した部分を伝ってカビ が伸長する状況が確認できた。
これは、サンプル採取時燻蒸後 長さを揃えるために茅を切除したため、切り口が燻蒸されない状態
になったこと、及び、紐の網目が燻蒸できなかったか、摩擦で煙成 分が払拭されたためとも考えられる。
   
 
4)培地のカビの広がり状況
培地のカビは、サンプル茅(3本)で囲まれた部分(内部)と外部に 分け観察した。無燻蒸のものは、内部と外部の違いはないが、燻蒸サンプルについては、外部では広がりが早いが、内部には進入できない状態が確認できた。特に、3時間以上のサンプルについては、カビが茅を避け、茅に触れないようブリッジをかけて内部に侵入しようとする「気中菌糸」の状態を、25日目に観測した。
結論
無燻蒸の茅材は、培地とともにカビに侵食されるが、煙により燻蒸した 茅材はカビを避けることが確認できた。これは、煙成分が抗菌作用を持 っていることの証明であり、更にその効果は燻蒸時間の長さに比例する ことが判明した。特に、3時間以上の燻蒸ではその効果が顕者であった。今回の実験は、一般に空気中に浮遊するカビに対する抗菌効果の確認であった。カビそのものは茅材あるいは構造材を劣化させることは少ない。しかし、カビに対し抗菌効果があったことは、カビと同様な性質を持つ腐朽菌に対しても効果があるといえることから、スーパーケムラーによる燻蒸が茅葺屋根とその建物の寿命を延長する役目を充分果たすことが確認できた。
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